もし青春18きっぷで旅行中に列車が不通になったら 7
③ 切符の規則
私は、青春18きっぷの規則も、旅客営業規則も詳しく勉強しているわけではない。だから、ここで書くことはあくまで私見だ。青春18きっぷで旅行中に列車が運行不能になった場合、どのような救済措置があるのだろうか?
仮に、持っていた切符が普通の乗車券であれば、既に乗車した区間との差額を払い戻して、その場で旅行を中止することができるし、JRから適切な代替手段が提供されたら、それを利用して目的地まで行くこともできる。切符を買って旅行することは、「契約」したことになるからだ。契約を守れなければ、代金は返金される、これは当然のことだ。ところが、青春18きっぷは、乗車区間を明示していない。従って、どこからどこまでJRは切符所持者を輸送する義務があるかが、問題になる。普通の考え方は、日付を入れて1駅でも乗ってしまうと、契約が成立する、ということになろう。JRから見ると、乗った距離にかかわらず、1kmでも輸送すれば、それで契約を履行、つまり「約束は守った」ことになるからだ。従って、今回の場合、矢吹駅まで乗車してきた青春18きっぷの乗客には、何も救済措置がなくても、理屈上おかしくはない。私が新白河駅で、大宮駅までの乗車券を特急券を買ったのも、この考えに基づく。常識的に考えれば、1日2,300円という安さで提供されている切符だ。安いには安いなりの理由があって当然だと思う。その理由が、今回のような非常時の救済措置がない、ということだと思う。これはあくまでも、理屈では、という次元の問題で、かくいう私も、それではひどすぎる、と考える一人だ。感情的には納得できない。
まず、矢吹駅に立ち往生した列車は黒磯行きだから、「黒磯まで乗車可能な」青春18きっぷを含む乗車券を持っており、乗客が黒磯まで行く意思表示をしている以上、JRには乗客を黒磯まで輸送する契約上の義務がある。その一方で、青春18きっぷでは、新幹線には乗れない。だから、黒磯以遠の駅である那須塩原駅まで、乗車券480円を買うことを条件に、新幹線に乗せるという判断は一理ある。代行バスを黒磯まで運転するという方法もあるが、不通になった場合、どういう代替手段を提供するかはあくまでも履行義務があるJRが決めること、乗客側は意見できないだろう。
では、黒磯より先まで、JRが乗客を輸送する義務があるだろうか?普通の乗車券の場合は、その終点までJR側に輸送義務があるのは疑いない。しかし、前述の通り、青春18きっぷでは、本来なんの救済もない。黒磯まで輸送できればいい、とJRは判断し、那須塩原までの「特認」を認めれば契約義務を果たしたとJRは考えたのだろうが、ここに私は異議を唱えたい。
私の異議とは、契約不履行の場合の「違約金」にあたるものの存在だ。普通、契約をキャンセルした場合、非がある側が違約金を払うのが一般的だ。例えば、不動産の手付金は、不動産を買う側が契約をキャンセルすれば返却されず、売る側がキャンセルすれば倍返しだ。今回の場合、JRが「黒磯まで運んだのだからこれで契約を果たした」と考えるのは、社会通念上甘いのではないか?JRは、「時刻通りに乗客を運べなかったので」、「矢吹駅で長時間乗客を足止めさせてしまった迷惑料として」乗客側に何らかのペナルティを負担することで、はじめて平等な契約関係というものだ。もっと簡単に言うと、JRは乗客に、「迷惑をかけてすみませんでした。おわびのしるしに、○○を差し上げます」という対応を取るべきではないのか?但し、前者の「時刻通り」については、JRには、特急・急行が2時間以上遅れた場合の、特急・急行料金についての払い戻しの定めがある。逆に言えば、JRは、普通乗車券の契約内容は、「何時間かかろうと、目的地まで輸送できればそれでいい」という考えを持っているようだが、これは時代錯誤だ。いまどき、それが通用するとは思えない。「時刻通り」列車を走らせることも、契約の要素だろう。
その上で、今回のJRが負担すべきペナルティにふさわしいものこそ、「青春18きっぷでも」「別に乗車券・特急券を買うことなく」「行きたい駅まで」「新幹線を利用できる」措置だと思う。いかがだろうか?JRにぜひ検討してもらいたいものである。
① 今回の体験についての私見
この夏は、ガソリン代の高騰から、帰省や旅行をマイカーから鉄道、高速バスといった、公共交通機関の利用に変えた方が多かったようだ。また、長引く不景気で庶民の節約意識が高まり、青春18きっぷの知名度も広まっている。更に、主婦や高齢者は時間に余裕があり、スローライフ志向からか、この層にも利用者が増えている。結果、昭和57年「青春18のびのびきっぷ」として旧国鉄が発売を開始して以来の歴史があるこの企画乗車券も、もはや鉄道マニアのものでも若者のものでもなく、国民一般向けのポピュラーな商品に成長した。
その中で、確実に増えているのが長距離利用だ。東京から仙台や名古屋、新潟といった300~350km圏内なら、おおむね7時間程度で移動できるため、この程度の距離の利用は珍しくない。
今回、鉄道マニアではない「一般の人」が途中で大量に立ち往生したわけで、商品を売るJRグループ側に、青春18きっぷに関する様々な対応を整備して欲しいと感じた。例えば、「一度日付を入れたら払い戻し不可」「途中で運転が取りやめになった場合の措置」といった、きっぷの取り扱いや規則類の整備と周知徹底。簡単なQ&Aのパンフレット類を作って配布したらどうだろうか?また、事故対応を実際にどうするのか、乗客誘導訓練といったソフト面の対応も重要だ。鉄道マニアはある程度切符の知識があり、また、事故時の対応を予測できることからまだ良いが、一般の人は鉄道営業規則に疎い人も多く、事故時の混乱に拍車がかかる。
今、鉄道に追い風が吹いている。せっかくのご時世だ。JRグループに、今回の教訓を生かした対応をお願いしたい。終
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